歌を習いにいらっしゃる方に、
「歌がうまいってどういうことだと思いますか?」
と最初に聞く事にしています。
面白いことに、人によって結構バラバラだったりします。
「音程がはずれないこと?」
「声が大きいこと?」
「リズム感があること?」
「高い音が出る人?」
「心をこめて歌える人?」
そんな答えが返ってくることが多いですし、
間違っていないと思います。
でもそれだけじゃない何かがありますよね。
歌を習いにくる人は、
歌が歌えないわけではありません。
ピアノやバイオリン、ギターなどの楽器の場合、
まず持ち方、構え方から入らないと「弾けない」人が多いのですが、
歌はほとんどの方が、とりあえず歌える状況でいらっしゃいます。
「弾けない」を「弾ける」にするのと違って、
「歌える」を「上手に歌える」にするためには、
「上手」の目標地点がはっきりしていないと先に進めません。
さらに、「好きな歌」「嫌いな歌」(歌い方とかジャンルとか)も
結構はっきり分かれるので、ゴールの設定はとても大切です。
だって、ロックを歌いたい人に、クラシックのレッスンをしても、
上手になるとは思えませんよねー!
そこで、私はよく「書道」に例えるのですが、
皆さん「字」を書く事はできますよね。
上手下手はあっても、書いたものを他人が読むことができるレベルに達しています。
これって歌とよく似ています。
上手下手はあっても、なんの歌を歌っているのか、
他人に伝えられるレベルの人がほとんどです。
でも、私たちは、子供の頃、
字を書く前に、鉛筆の持ち方や、縦棒、横棒、丸の書き方などを教わるのに、
歌を歌う前に、声の出し方や息の吸い方を教えてもらっていません。
それは、実を言えば「歌を教える立場」にいる人も同じだったりします。
今現在「歌を教える」職業についている人は、
ほとんどの人が「生まれつき歌がうまかった」人なんですね。
だから歌う前にどんなことを教えればいいのか、
実際の教室の現場では、曖昧なまま教えている先生もたくさんいるのが現実です。
私自身もそうでした。
本当に、最初の頃に受け持った生徒さんには、
土下座して謝りたいくらい!
歌を教えるということがどういうことなのか、まったくわかっていない先生でした。
「先生と生徒」とか「師匠と弟子」というと、
高いところから水が流れるように、
一方的に知識が先生から生徒に流れ込むと思っている人も多いと思うのですが、
実際には、生徒から先生が学ぶこともたくさんあります。
今まで関わってくれたたくさんの生徒さんのおかげで、
私自身、いろいろなことを学ばせて頂きましたし、
また音楽フィールドではないところから頂いたヒントもたくさんありました。
歌うことのノウハウが、文章だけでどこまで伝わるのかわかりませんが、
歌がうまくなりたい方へ、
そして、歌を教えることに悩んでいる先生へ、
少しでも役に立てればと思っています。
最後に…
私自身まだまだ学びの途上にあります。
ですので、皆さんからのご意見も聞きながら切磋琢磨していければと思います。
どうぞ宜しくお願いいたします。