2020年春、きっと世界中の人の記憶に残る年になるのでしょうね。
音楽教室はかなり初期の段階で休講となったため、私は約2ヶ月半もの間、ほぼ仕事がありませんでした。
もし長いお休みがもらえたら、あんなことやこんなこともしてみたい…と思っていましたが、
残念ながら旅行はできず、断捨離も中途半端、何十年分かの写真アルバム整理も手付かずで(笑)
まぁいくつかはできたものもありますが、今日は1冊の本をご紹介します。
「魂がよろこぶスピリチュアルボーカルレッスン」
ええ、長い休み期間にこんな本を書いておりました。
YouTubeなどを見れば、ボイトレ関連の動画もたくさんあがっていますが、
それだけでは解決できないことがまだまだあるだろうなと漠然と感じていましたので、それをひとつずつ文章にしていった感じです。
タイトルからもわかるように、ちょっと変わった視点から歌うことについて紐解いた内容になっています。
「はじめに」の部分を全文公開いたしますので、
興味を持っていただけたならぜひ読んでみてくださいね。
5/13現在、kindle版のみですが、6月以降オンデマンド印刷版も出る予定です。
kindle unlimitedに加入されている方は無料で読めます。
「はじめに」
「才能アリ」「才能ナシ」「凡人」と、芸能人を評価する番組が平成の終わり頃から放映され始めました。メインは俳句の評価ですが、絵画や生け花、料理の盛り付けなどいろんなジャンルがあって面白く、毎週楽しく見ています。
自分が「才能アリ」だと思っている人は自信満々です(テレビ的にそう言わされているだけかもしれませんが…)。ですがその番組で有名になった俳句の先生はバッサリと「凡人」とか「才能ナシ」とか切り捨てちゃうんですよ。長年「先生」と呼ばれる職業についてきた身としては「そんなこと言っちゃっていいの?」と衝撃を受けました。
私が教えているボーカル教室にはいろんな目的を持った生徒さんがいらっしゃいますが、教室と言ってもどちらかと言えば「教育寄り」ではなく「趣味の場」ですので、生徒さん=お客様に対して「あなたは才能ナシです」なんて言うことはありません。そんなことを言ったらみんな辞めてしまいます(笑)。
ちょっと生々しい話になりますが、音楽教室で一番大切なことは「ひとりでも多くの生徒になるべく長く通って頂き、お金を払い続けて頂くこと」です。収益をあげることが最優先ですから。
プロを目指す人に教える教室であっても基本は同じです。なるべく長く通って頂くために、生徒をおだててほめて楽しい気分になって頂くことが上手な人が「いい講師」と評価されることになります。
いやいや上達させてくれるのがいい講師でしょ、と言いたくなるとは思いますが、では何がどうなったら「上達した」と言えるのでしょうか。講師側から見た「上達」と習っている側が感じる「上達」の概念には大きな違いがあります。先ほどの番組の俳句を例に考えてみましょう。
私には俳句の才能はないのでタレントさんが詠んだ作品が優れているのかそうでないのか一見してはわかりません。ただ「これ好きかも」「よくわからない」と反応するだけです。
それを先生が「才能アリ」とか「才能ナシ」とか判定してくれて、その作品のどこが優れていてどこがダメなのか、添削やお手本を見せながら解説してくれるのでかなり納得感はあるのですが、それでも時々「よくわからないなぁ」という気分になることもあります。それは私がもっともっと初歩的な俳句のルールを把握していないからなんでしょうね。
例えば米津玄師やKing Gnuなどの難易度の高い曲を聴いて、それをコピーして演奏しているバンドがあったとします。彼らが正しく模倣できているのかそうでないのかルールを知っている人なら聞き分けることができますが、ルールを知らない人にとっては「なんとなく一緒に聞こえる」ということになります。
もっと具体例をあげると例えば書道。日本人は書き順というルールを知っていますので、少々バランスが崩れていてもその字がなんと書いてあるのか認識できます。ですが書き順を知らない外国人が「なんかこの字かっこいい!」と思って形だけを真似して書いたとしても同じ字にはならないと言えばいいでしょうか。
つまり初歩的なルールがわからない素人には、優れているのかそうでないのか、上達しているのかしていないのかを客観的に把握するのがとても難しいということなんです。
講師としては少しでも上達してもらいたいと思うので、あの手この手で説明し、実践し、練習してもらうのですが、本人が「自分はすごく上達した」と感じられなければ、悲しいことに「いい先生についた」とも思ってもらえないことになります。
多くの生徒さんは「他人から評価された時」にだけ「上達したんだろう」と感じます。ですがその評価をしてくれた人が「何を基準にほめているのか」というところまであまり考えませんよね。
実は素人の評価ほどあてにならないものはありません。私は以前おしゃれなカフェバーと呼ばれるようなお店でピアノの弾き語りをしていたことがあります。ライブがメインのお店ではなく、お客様の会話の邪魔にならない程度の音量でBGMを生演奏しているようなお店でしたので、演奏が終わっても拍手もありません。ですが長いこと歌っているとたまに拍手が起きる日もあるんです。
どんな時だと思いますか?たぶん演奏がめちゃくちゃ良かった時だろうと思いますよね?これがまったく出来不出来と比例しないんですよ。「今日は調子がいいし会心の出来だ!」と思ってもスルーされることもあるし「今日は声の調子がいまいちで上手く歌えていない」と思っているのになぜか拍手を頂く時もあって、同じ曲でも同じ出来でもその時によって反応が全然違うんです。拍手に一喜一憂するのは無駄なことなんだとその時に学びました。
誰かに評価されたからと言って上達しているとは限らないし、評価されなかったからと言って上達していないとも限らない、そしてそれを客観的に把握するのはもっと難しいということです。
音楽に限らずどんなジャンルにも言えることですが、何かを練習して短期間に飛躍的に上達することはほとんどありません。
陸上の選手に例えてみましょう。100mを15秒で走る選手がいたとして、この人がどんなにいいコーチについたとしても「短期間で10秒を切る可能性」はものすごく低いと想像できますよね。
野球の選手に例えれば「100キロで投げるピッチャー」に有名なコーチが的確なアドバイスをしたとしても、140キロで投げられるようになるまでには本人の血の滲むような努力なしでは到達できないのと同じです。
歌を習いに来る人がよく言うのが「大好きなアーティストさんが気持ちよさそうに歌っているのであんな風になれたら…」という目標です。こういう人が先生に求めているのは「私は100mを15秒で走れるので、1回教わっただけでオリンピック選手並みのレベルにしてくれるはずだ」という感じになるでしょうか。
大好きな曲をカラオケで歌って100点に近い点数をとり、一緒に行った人から「本物そっくり!感動した〜」と言ってもらえるレベルにはそうそう簡単には到達できません。
もちろんそのレベルを目標にできる人もいます。それはいわゆる「才能アリ」の人ということになりますね。
自分が「才能アリ」なのか「凡人」なのか「才能ナシ」なのかによって何を目標にするのかが変わってきますし、練習方法も上達速度も違うのが当たり前なのですが、音楽教室においてはその基準が曖昧なため、先生も生徒も見当はずれな努力をしている可能性は否めません。
それにしても特に習ったりしていないのに、生まれつき歌が上手い人もいればレッスンを受けていてもなかなか上達しない人もいます。この違いは一体どこからくるんでしょう?また、好きな曲と嫌いな曲の違いはどこにあるんでしょう?
上手いとか下手とか感じた時に、好き嫌いが比例しないケースも結構あります。これは一体どういうことなんでしょう?そもそも歌が上手いって一体どういうことを言うのでしょう?
なんとなく全部が曖昧なまま、生徒さん=お客様のご機嫌をとるだけのレッスンに長年ジレンマを感じてきましたが、この際ですからいろいろと紐解いていこうと思います。
もうひとつ、私が子どもの頃からずっと疑問を持って興味を持ち続けてきた分野に「スピリチュアル」があります。UFOや宇宙人は本当にいるんだろうか、人はなんのために生きているのだろうか、超能力って本当にあるのだろうか、神様ってどこにいるんだろう?悪いことをしたら罰があたるんだろうか?などなど。
誰に聞いてもよくわかりません。オカルト雑誌の「月間ムー」を読んでみても「続報を待つ」と書いてあるばかりだし「やりすぎ都市伝説」を見ても「信じるか信じないかはあなた次第」と言われるだけ。バシャールには「ワクワクすることをしなさい」と言われ、ちっとも本当のことに近づける気がしません(バシャールはスピ界でちょっと有名な宇宙人です)。
手当たり次第に本を読み漁り、セミナーに参加したりリーディングを受けたりしているうちに、スピリチュアルの知識が音楽の練習にも役立つかもしれないと考え始めました。長年音楽業界に関わってきたノウハウをスピリチュアルな視点から見て私なりに解釈したことをお伝えできればと思います。どのような練習をすればいいのかについても項目ごとに詳しく触れていきますので、ボイストレーニングの方法を知りたい人にも参考にして頂けたらと思います。