一つ前の記事では「言葉を伝える」ことについて書いてみましたが、
言葉だけでは伝わらない表現もありますよね。

例えば
「愛してる」
という歌詞を歌ったとして、
それが、幸せいっぱいの人の歌なのか、
未練たらたらの人が歌っているのか、
または、異性に対して歌っているのか、親なのか赤ちゃんなのか、
ここだけでは判断できませんね。

歌詞の注意点でも書きましたが、
メロディとリズムの制約がある中で、どうすればうまく感情表現できるのでしょうね。

巷のカラオケ教室で、ありそうなシチュエーションとして、
「そこ、もうちょっと気持ちを込めて歌いなさい!」
って言う先生、多そうですよね。
もし、自分が習っている先生が、よくそう言うタイプなら、
「どうやったら気持ちを込められるんですか?」
という質問をしてみてください。
具体的に例を出して教えてくれる先生ならいいですが、
「とにかく感情を込めて」としか言ってもらえないのなら、
残念ですが、それ以上の上達は難しいかもしれません。

例えば、とても悲しい歌を歌う場合、
本当に悲しい出来事が起きた時に、自分がどうするかを考えてみましょう。
本当に悲しいなら泣いちゃうかもしれないし、
きっと、歌なんか歌える気分じゃないですよね。

つまり、絶対的にリアルな感情が必要なわけではないんです。
聴いている人に、
「ああ悲しいことを伝えたいんだな」
とわかってもらえる表現ができればいいんです。
では、具体的に「泣かないで、落ち込まないで」どんな歌い方をしたら、
聴いている人に伝わるんでしょう。

ここで使うのが「発声」のテクニックです。
声の大きさや、強弱の変化、
発声の種類、その組み合わせ、
そのバリエーションをたくさん持っている人が、
「感情表現が優れている」と評価される人なんです。
もちろんチョイスを間違っちゃうと意味がありませんが…(笑)

「なんか基礎練習って結構大事なのね」
という気分になってきましたか?

もうひとつ、「愛してる」をラブラブな気持ちで歌ってみようか、
というレッスンをした時に、
「私、恋愛したことないので、よくわかりません…」
と言った高校生がいました。

これ、俳優さんの話でとてもわかりやすい例があるのですが、
殺人犯の役をもらって、
「僕はまだ誰も殺したことがないので殺人犯を演じることができません」
と言っているのと同じですよね。

何もかも、自分で体験しないといけない、なんてことはありません。
想像すること。
そしてあらゆる角度から、観察することが大切です。

たとえばね……
休日のフードコートで、まわりをじっくり観察してみると、
言葉を聞かなくても、遠くから表情を見るだけで、
「ああ付き合いはじめたばかりのカップルだねー」とか
「今日はお義母さんと一緒でぎこちないのねー」とか
なんとなくわかってきます。

逆に、ラジオドラマを聞いて、
表情がなくても、こんな声の出し方で感情を表現できるのね、
なんてことを観察してもいいと思います。

いろいろな表現方法、練習してみてくださいね。

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