レッスンにいらっしゃる方に目的を尋ねた時、とても多くの方から出る希望がこれ。

「高い音で歌えるようになりたい」

これ、結構複雑な理由があり、教える側としては結構悩みどころです。
まず、なぜ高い音を出したいの?と聞くと、
自分の好きなアーティストの曲を原曲キーで歌いたいから、という理由がほとんどです。

今どきのカラオケには、キーを上げ下げできるボタンもあるし、下げて歌えば?と言うと、
とても納得のいかない顔をする方が多いです。

そもそも、「身体が楽器」であるボーカルの場合、
楽器そのものが、大きさも形も様々で、音域も音色もひとつとして同じ人はいません。
それぞれの楽器が一番鳴る音域というのがあるわけで、
プロのアーティストの場合は、レコーディングする前に、
そのアーティストの声が、一番きれいに乗る音域を選んでキーを決定するため、
作曲者が作った時点のものとは、キーが変わることもよくあります。

また、アーティストの体調や、年齢による声の変化に合わせて、
ライブの時に、キーを変更する場合もないわけではありません。

つまり、オリジナルのキーにこだわって歌うこと自体、あまり意味がないとわかって頂けるでしょうか。

音域の合わない曲を無理に歌おうとするのは、
例えば、ソプラノリコーダー用に作られた曲を、
アルトリコーダーで吹くようなものです。
ギター用に作られた曲をベースで弾く、という例えもいいかも?

これらは不可能なことではありません。
ただ、プロの演奏家であっても、とても技術のいる難しいことだとわかりますよね。

走り高飛びに例えてみましょうか。
低いバーならどんなフォームでも大抵の人は飛び超えることができます。
でもバーがどんどん高くなっていけば、しっかり助走をつけて、正しいフォームで何度も練習しないと飛べなくなっていきます。

つまり、自分の音域より高いキーの曲を歌うためには、
呼吸法や発声法をしっかり身につけてからでないと、思うように歌えないということです。

巷のボーカルレッスンで「簡単に高い音で歌えるようになる!」なんて宣伝しているのは、
ちょっと眉唾だと思ってもいいかもしれません。
力の入れ具合によって、まぐれで高いバーが飛び越えられることはあるかもしれませんが、
毎回、コンスタントに飛べるようになるためには、地道な練習が必要だということなんです。

さて、最後に、人はなぜ「オリジナルキーで歌いたいと思うのか」ということについて、
研究途上ではありますが、仮説を解説しておこうと思います。

音は振動です。
音楽は、単純な波長ではなく、いろいろな波形や周波数がミックスされてできています。
人にはなぜ「好きな音楽」と「そうではない音楽」があるのでしょう。
同じ音楽について「私は好き」「私は嫌い」という人がいるのはなぜでしょう。

詳しいことはここでは書きませんが、それぞれの人の身体の状態によって、気持ちいいと感じる振動が違うんですね。
だから、音楽は耳だけで聴いているわけではなく、身体で聴いていると言っていいと思います。

自分が好き!と思って聴いている音楽は、その振動が気持ちいいから聴いているわけで、
その曲のキーを変更したら、振動数も変わってしまいますので、気持ちよさが変わってしまうんです。
だからオリジナルキーで聴きたいし歌いたい、と思うんですね。

それが、自分の音域に合っていればラッキー!ですが、
合わない場合には、「聴くための曲」と「歌うための曲」を分けて考えるのも手かもしれません。

高い音で歌えるようになりたい方、参考になりましたでしょうか?
あ、ミックスボイスとか、ミドルボイスとか言われる発声のこともよく聞かれますが、
これは、基本的なフォームを身につけた上で、発声をコントロールする方法です。
生まれつき、これができる人もいますが、そうでない場合は、地道な基礎練習が必要です。
皆さん頑張って練習してくださいね!

 

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