歌が上手いかどうかの基準に「音程」があります。

「リズム音痴」なんて言葉もありますが、それはまた別の機会にお話するとして、
音痴が治るかどうかという話をしてみましょう。
そもそも「音痴」っていう基準もかなり曖昧です。
「私、音痴だからカラオケとか嫌いなんです…」という人が時々習いにいらっしゃいます。
でも実際に歌を聞いてみると「それ、音痴じゃないじゃん!」ということもよくあります。
どちらかと言えば、
「歌が下手」=「音痴」
と位置づけている人が多いように思います。
本当の「音痴」というのは、音の高低がわからないレベルを言います。
つまり、色がわからない「色盲」の人と同じで、脳が音階を認識できない状態です。
これはボイストレーニングでは簡単には治りません。医学的な対処法も今現在はないと思います。
そしてこの対局にあるのが「絶対音感」で、
耳に聴こえるすべての音を、その名前で呼ぶ事ができます。
「ド」とか「レ」とかね。
絶対音感にもレベルがあって、
これも色で例えるととてもわかりやすいと思うのですが、
12色の色鉛筆の色の名前を言えるレベルから、

120色の色鉛筆のグラデーションを判断できるレベルまで様々です。

そして普通の人は、その間に位置する「相対音感」となります。
その幅ももちろんかなり広くて、
ふたつの音が鳴っている時に「高い」か「低い」かわかる、というレベルから、
その音の距離がどれくらい離れているのかわかるレベルまであります。
つまり、この「相対音感」を持っている人は、厳密には「音痴」とは呼べないわけです。
でも、よく音がはずれちゃう、とか音がよくわからないという人は、
大きくふたつの理由があることが多いです。
まずは、いわゆるスケール(ドレミファソラシド等)がしっかり把握できていない場合。
もうひとつが、コントロールがうまくできていない場合。
スケールの話になると、平均率から純声律から、
メジャー、マイナー、ダイアトニックスケールなど、
もうそれだけでシャッターガラガラー閉店!という気分になっちゃうので、
詳しくは書きませんが、
この「ドレミ~」の音階が、文字通り「西洋音楽の定規」となりますので、
まずはここをしっかりおさらいしておかないと、
「定規を使わずに、まっすぐな線をひく練習をする」ような、
無駄に時間を費やしてなかなかうまくならないレッスンをすることになってしまいます。
そして、その次に練習するのがコントロールです。
例えば、小学校へ入って、はじめて字の書き方を習う時には、
四角いマスの中に点線が引いてあって、お手本の文字が薄いグレーで書いてあるところを、
なぞるように何度も書いて練習しますよね。
何度も練習しているうちに、はじめはマスからはみ出してしまったり、
大きくズレてしまっていた文字も、だんだん形が整っていきます。
最終的には、マスもお手本もないところに、字が書けるようになるわけです。
これが歌の段階で言うと、
「アカペラ(無伴奏)で正しい(相対)音で歌うことができる」状態です。
これが生まれつきできちゃう人が「歌が上手い人」ということになりますね。
逆にここがうまくいかない人が、自分のことを「音痴」だと思うんでしょうね。
さらにもう少し細かく言うと、小学生は、ただお手本をなぞるだけではなく、
指先の力加減のコントロールを覚えるために、
鉛筆の持ち方とか、まっすぐな線の引き方、カーブした線の引き方などをあらかじめ練習するわけです。
歌で言えば、息の量をコントロールする、
音程を合わせるための筋肉の使い方をコントロールする、
といった練習が必要になります。
ピアノで言えば、指の形とか、どの高さから鍵盤を叩くのか、とかね。
私は、この音程をレッスンで取り上げる時に、
「ストラックアウトの練習だと思ってやってください」とよく言っています。
四角い9マスの中に数字が書いてあって、ボールを当てるというゲームですね。
「10回連続で3に当てて下さい」と言われたら、とても難しいですよね。
確実に狙った的に当てるためには、
力加減や速度、角度などを身体と脳が覚えるまで、 何度も練習を繰り返す必要があります。
音程も同じことなんです。
確実に狙った音を出すためには、むやみに投げるだけではなかなか上達しません。
そうそう、もうひとつポイントがありました。
自分の楽器(声)の音域に合った音で練習しないともちろんなかなか上達できません。
つまり、例えばバスケットのゴールがめちゃくちゃ高い場所にあるのに、
一生懸命シュートの練習をするようなことは、プロだってまずやりませんよね。
正直に言うと、こういうことに気付くまで、
私自身、本当に効率の悪いレッスンをしていたと思います。
何年も習っているのになかなか上達しないなぁと思っている方、参考にしてみてくださいね。

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